Dialogue
※ご本人の許可をいただき、お名前・写真を掲載しています。
2022年5月から4年間、2か月に1度のペースで重ねてきたコーチングセッション。一度も欠かすことなく続けてくださったのは、在宅医療に携わる医師の藤井浩史先生です。
最終回となったこの日、10年後のビジョンを言葉にしていただきながら、4年間をともに振り返りました。その一部を、ご本人の許可をいただいて掲載します。

中尾今日はしっかりと、10年先を見据えた藤井先生の中身を言葉にしてもらいたいと思っています。10年後、何を手にしていたいですか?
今やっていることの延長線上で考えると、医師として今の専門を持ちながら、在宅医療のケアを専門にやっていること。研究では論文を何本か出したいと思っていますし、コンピューターやセキュリティのことも学んでいたい。10年後にはそれを全部持っているだろうな、と思います。
でもそれ以上に、そういうことをやっていくプロセスの中で、人との繋がりや自分の価値がより育っているだろうなと。結局、一緒に取り組んでいく人との繋がりを大事に思っているんじゃないかな、と感じました。
中尾その先に「あってほしい社会」のイメージもあるんですよね。
自立して選択して、納得できる人生の選択ができる——それが自分の中ですごく重要視されていて。そういう社会であってほしいと思っています。
ただ、自由であることが逆に苦しい人もいる。そういう人を支援する役割も、何かの形で担いたいんだろうな、と思いました。
中尾お会いした頃から、選択が自分の手にあることをとても大事にされているのは感じていました。でも、それができない人への支援まで考えるようになられたのは、何がきっかけだったんでしょう。
自分ができることと人ができることは別物だ、ということを、管理者という立場ですごく感じてきたからだと思います。頭でわかっていてもできない人はいるし、そういう人たちにたくさん向き合ってきたからこそ、「だったら仕組みじゃないか」と。
誰かが「いい」と言った方向にみんなが進むのではなくて、一人ひとりが自分にとって居心地がいい方向に自然と進んでいく。そういう意思決定が自然に起こる社会システムや構造になっていないと、全体としてはうまくいかない——それはすごく感じるところです。

中尾この4年間で、手放されたもの、新たに得たものは何だったと思いますか?
得たものは、物事を見る解像度が明確に変わったことです。ニュースひとつでも、その背景で何が起こっているのかを想像できるようになった。視点が変わって、いろんな分野の知識が入りやすくなったと感じています。
手放したのは、「自分ひとりでやり切ること」ですね。今は意識的に人に頼るようにしています。自分で全部完結させることを、やらないようにしている。
中尾それは苦しくなかったですか?
相手が期待している場面で、汲み取った上で応えないという選択をするのは、正直ストレスがあります。でも、自分がいない方が、その場にいる人たちが自分で考えて実践できるようになるんじゃないかという信頼があるので。本当にダメそうなら自分が出ますが、なくてもなんとかなりそうなら、いない方がみんな頑張るんじゃないかと。
中尾それはスタッフの方への信頼の証ですね。皆さんの成長の機会をあえて作っていらっしゃる。
中尾もしコーチングがあるのとないのとでは、どんな違いがあったと思いますか?
なかったら、結構苦しかったと思いますね。
ここは自分の感情を吐き出す場であると同時に、冷静になって「本来こうあるべきだよな」というところを確認する場所でした。感情と、あるべき姿と——それをごちゃまぜにせず整理していくプロセスを手伝ってもらっていたなと思います。
それと、自分の変化に気づくのがこの場だったと思います。無意識に少しずつ変わっていたものが、話す中で言葉として表に出て、「あ、自分は明確に考え方が変わっているんだ」と気づけた。マネージャーに変わったな、というのは自分にとって大きな気づきでした。
中尾もし4年前の藤井先生と同じような——忙しさゆえの孤独を感じているリーダーがいたら、何を伝えたいですか?
経験になったらわかること、時間が経って気づくことがたくさんあるんだ、ということですね。うまくいかないことはいっぱいあるけれど、それを全部今うまくいかせる必要はない。1年、2年かけて理解していけばいい。
だから——「慌てなくていい」と言いたいです。
中尾ここまで語ってみて、今気づいたこと、感じていることは何ですか?
……恥ずかしいなって思ってますね(笑)。でも、自分には思ったより理想があるんだな、ということがよくわかりました。今やっていることは、その延長線上にあるんだと実感します。
中尾本当に楽しい4年間でした。ありがとうございました。
ありがとうございました。……寂しいですね。
編集後記
4年前、藤井先生は『目の前のことで必死だった』と話されていました。対話を重ねる中で、その視点は目の前の出来事から組織へ、そして社会へと少しずつ広がっていきました。
人は劇的に変わるというより、自分でも気づかないほど少しずつ変わっていくものなのかもしれません。だからこそ、その変化を言葉にできる時間には意味があります。
聴かれる体験を持った人は、人の話を聴ける人になります。これから藤井先生が、多くの方の思考と感情を支える存在になっていかれる姿が自然と思い浮かびます。
4年間、本当にありがとうございました。